公益社団法人 日本畜産学会

理事長挨拶

第32代理事長就任にあたって

公益社団法人 日本畜産学会 理事長 
           菊地 和弘   
(北里大学 獣医学部獣医学科 教授) 

 

 

 

 

 

 

 理事長を拝命いたしました菊地和弘でございます.農水省農業生物資源研究所から農研機構生物機能利用研究部門に在職し,この4月より北里大学に参りました.畜産学会には1990年に入会しております.理事を拝命して11年目ですが,この間,機関誌編集委員長や副理事長を務めました.

 ご存知の通り,畜産学会は昨年創立100周年を迎えました.記念式典ならびに記念講演会は京都大学にて執り行われ,成功裏に終わりました.多くの会員の皆様からは200年に向けて頑張りましょう,との威勢の良い声が挙がっておりました.しかし,小澤前理事長を含め常務理事の中では,せいぜい110年を目ざしましょうと声が少し小さくなってしまいました.決して控えめな態度ではなく,畜産学会(畜産学)が対面する現実はそれほど安泰ではないからです.難しい課題はいくつもあります.私をはじめ今季の役員が,その不安を払拭すべく,以下について重点的に対応したいと考えております.

①  会員減少に対処します: 少子化に伴う学生の減少,大学においては畜産学の看板を掲げる学部・学科の減少,学生の理系離れといった外的な要因もあり,負の連鎖に陥っています.これは畜産学に限ったことではありません.一方で日本の農業生産額では畜産業の占めるウエイトが40%に迫る勢いで,畜産製品の輸出ももはや珍しくありません.国民の畜産学に関する関心は日増しに高くなっていると思います.畜産業を基盤とした畜産学の発展にどのように対応していくかが重要です.2年前の小澤前理事長の就任挨拶では「畜産学栄えて畜産業滅ぶ」という警鐘がなされました.引き続き,「産学の一体化」の重要性を再認識し,対応します.

②  財政のさらなる健全化を目指します: 昨年度,断腸の思いで年会費の値上げをさせていただきました.赤字の解消が主目的でしたが,支出を抑える方針に変更はないものの,必要な事業については強化しなければなりません.特に学生・若手会員が秘めた底力を引き出せるような事業,例えば国際研究集会参加補助などについて検討します.

③  機関誌がかわります: 英文機関誌であるAnimal Science Journal (ASJ)においては,インパクトファクターも年により多少の増減はありますが上昇傾向が続き,国際誌としても一定の評価が得られています.一方,国際誌ではオープンアクセス(OA)の掲載数が増えており,個人や機関(図書館)での購読が減っている状況です.ASJでもその傾向が見られます.これを踏まえて新たな出版契約を締結します.掲載時に著者から頂戴していたページチャージを廃止する代わりに,出版社からのOAのロイヤリティ収入で対応します.これにより,秀逸な論文の投稿数が増加し,収支の改善が見込まれ,期待も大きいところです.また,慣れ親しんだ投稿・査読のシステムも大きくアップデートされますのでご注意願います.いっぽう,和文機関誌である日本畜産学会報は,投稿・掲載数の伸び悩みが続いております.現在は年4号(4回)を発行していますが,2号ずつを合冊として年2回の発行とすることを検討しています.

 このように,創立100周年を迎えた畜産学会ですが,これを機に大きく変革することが予測されます.将来を見越した建設的な議論を踏まえての,会員一丸となった会の運営にご理解とご協力をいただきますよう改めてお願いいたします.共に日本の畜産業と畜産学の発展を目指して邁進していきましょう.

2025年4月30日